鯉とは・・

コイは生命力が強い魚であり、滋養があるとされ、妊婦などの栄養補強にもよいとされています。
日本では鯉こく(味噌で煮込んだ汁)、うま煮(切り身をさとう醤油で甘辛く煮付けたもの)、甘露煮にしたり、
さらには洗いにして酢味噌や山葵醤油を付けて食べます。中華ではから揚げにしてあんをかけて食べます。
稀に鱗を唐揚げし、スナック菓子のように食べることもあります。

伝承

中国では、鯉が滝を登りきると龍になる「登龍門」という言い伝えがあり、古来尊ばれています。
その概念が日本にも伝わり、江戸時代に武家では子弟の立身出世のため、
武士の庭先で端午の節句(旧暦5月5日)あたりの梅雨期の雨の日に鯉を模したこいのぼりを飾る風習がありました。
明治に入って四民平等政策により武家身分が廃止され、こいのぼりは一般に普及しました。
現在ではグレゴリオ暦(新暦)5月5日に引き続き行なわれています。


日本では古くから女性が健康(体力作り)のために鯉を食したと言う伝説や伝承があり、
御産の後に鯉を食べると母乳がよく出ると言う伝承も見られる。こうした話は東西を問わず内陸地には多い伝承です。

コイは薬用としても優れた食品

近畿大学薬学部 久保道徳氏 報文より

コイは中国最古の薬物書にも

中国ではコイの薬用としての紀文は 「神農本草経」という書物に初めて出てきます。
これは中国の現存する最古の薬物書といわれています。
この書物には薬になる動植鉱物が365品目収載され、コイはその中でも、長期に食用しても害がなく、
人の健康を保つために用いられた上品、上薬といわれる医薬品の中に分類されています。

コイは各種の病気に効く良薬

今から1500年ほど前の中国の梁代に、陶弘景という医薬学者がいました。
この人は中国各地の名医の意見や体験をもとに、「名医別録」という薬物書を出して、
コイの肉の効用を次のように述べています。
「肉は、主にせき込んで苦しい状態や肝臓病を治し、口の渇き病(糖尿病など)の口渇を止め、
心臓病や肝臓病で足に水がたまって腫れている状態を治し、気を下す(気持ちを落ち着かせる)」といっています。

コイは肝臓病に最良の食品

慢性肝炎になり、肝硬変になれば、完全に治ることは不可能ですが、肝臓の4分の1が元気に働いてさえいれば、
その人は天寿を全うできるといわれています。
私の研究室で、コイの煮たものを実験動物に毎日食べさせると、再生肝作用といって、
新しい肝細胞がどんどん増殖していく作用があることが判明しました。
また、コイの肉はタウリンという、強肝剤として使われる含硫アミノ酸が含まれています。
これは飲酒時には解酒毒剤となり、酒で二日酔や脂肪肝になるのを予防する作用があるのです。

コイは糖尿病や皮膚病の治療にもよい

糖尿病という病名は近年いわれたことですが、昔は中国で消喝病、すなわち、のどがよく乾く病気だといわれていました。
この消喝病にコイがよく食べられたのです。
糖尿病は不治の病といわれているだけに、毎日の食生活の中で少しでも改善し、
インスリンホルモンに代わるような作用がコイにあるならば、願ってもないことでしょう。
コイはタウリンの他に、肉や内臓には、私たちの身体を構成するタンパク質を豊富に含んでいますので、
病気を治療するには不可欠のものといえます。
また新しい細胞を作る原料となるのですから、皮膚病の治療にも役立っています。

コイには胃潰瘍の抑制効果がある

コイを食べると食欲がわき、胃炎が治り、便秘も解消するという効果があります。
試しに、実験動物に胃潰瘍を発生させ、これにコイを食べさせたところ、
確かに治療促進効果があり、まるで薬のような効果がみられました。
すなわち、胃潰瘍の人は、薬ばかりでなく、コイのような高栄養食品を食べることも大切です。
胃のもたれなど2、3日でよくなった例や長年わずらっていた胃潰瘍がコイを食べ始めてからよくなって、
手術の必要がなくなったという話も聞きます。
さらに、コイを食べれば便通がスムーズになることは、私も経験しています。
コイには胃がないのに胃に効果があるということは実におもしろい現象です。

コイは肝臓病による「むくみ」を解消

コイは肝臓病の薬としても大変有名なものです。特に「むくみ」を解消するのに著効があるります。
肝臓病で身体がむくみ、パンパンに腫れ上がっているときにコイを食べると、
一気にその水分が体外に排出されると言われています。

コイは母乳の出がよくなる

コイは母乳の出がよくなることを知っている方も多いでしょう。
これも、中国の知識が伝来したもので、明の時代の大薬学者であった李時珍は、その明著「本草網目」の中で
「乳汁を下し、腫を消す」と記しています。
つまり、コイは乳児に母乳を飲ませたくても、十分に出ない母親にとっては、願ってもない特効食品です。

久保道徳「薬用魚・コイの効用」ヘルス研究所、1984年

鯉は以上のように、優れた薬用魚であり、良質の栄養食品です。
ぜひ時々はコイ料理で食卓を賑わし、一家の健康を増進してください。